今さら聞けない?「ダイバーシティ経営」の定義とメリット

グローバル化やイノベーションが加速化する近年「ダイバーシティ経営」の必要性が叫ばれてきました。政府をはじめ、女性の活躍を意識する企業も増える一方で、その意味や目的に誤解が多いのも事実です。ダイバーシティ、つまり多様性とは何を指すのか、それを経営に活かすことによって企業にどんなメリットがあるのか、あらためて見直してみましょう。

ダイバーシティ経営とは?

ダイバーシティの意味を辞書で引くと「多様性」。会社にとっては多様な人材を活用していく試みということになりますが、日本の多くの企業は女性の活躍のみに狭めて考えがちです。しかし性別に限らず、人種、年齢、身体障害の有無による多様性もあれば、さらに職歴や宗教、価値観、育った環境など、表面的には分からない多様さもその意味に含まれるのです。

ダイバーシティの概念は、もとをたどれば1964年、アメリカの公民権法成立に始まります。当初は人種差別に関する訴訟を避けるために使われましたが、1980年代には人種の違いや文化の違いに価値があるといわれるようになりました。さらに1987年、アメリカの労働力人口構成予測「Workforce 2000」というレポートが発表され、今後労働人口は女性や高齢者、移民の比率が上がり、産業は製造業からサービス業へ転換していくと予測されました。この変化への対応策として必要となったのがダイバーシティ経営です。「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉が生まれ、多様な人材・能力を積極的に生かすことが企業戦略に欠かせないという考えが浸透しました。

21世紀になると、グローバル化やIT産業の発展が急速に進み、また国際的なM&Aが増え、ダイバーシティ経営はますます不可欠な状況となりました。つまりダイバーシティ経営とは、今やリスクマネジメントやCSRといった優良企業の物差しではなく、競争に打ち勝つための経営戦略という位置づけになっているのです。

少子高齢化が進む日本では、なおさらその必要性は迫っているにもかかわらず、危機感を持つ人が少ないという専門家の指摘も少なくありません。経済産業省では、ダイバーシティ経営を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値 創造につなげている経営」と定義し、推進しています(引用元:平成28年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」ベストプラクティス集 | 経済産業省)。

具体的には、ダイバーシティ経営で成果を出す企業を「新・ダイバーシティ経営企業100選」や「なでしこ銘柄」に選定・表彰しています。

企業にとってのメリットは?

ダイバーシティ経営を取り入れることにより、企業にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

優秀な人材を採用できる。多様な発想によるイノベーションが創出される

採用の間口を広げることで、今まで「新卒一括」というくくりでは採用できなかった優秀な人材を確保できます。これまでとは違う多彩な能力が集まるため、視点も広がり発想が豊かになります。そうしたなかから斬新なアイデアが生まれ、革新的な商品やサービスの誕生につながるのです。

摩擦により社員が成長する。生産性を見直すきっかけになる

異なる意見や価値観に触れることで、社員同士も刺激になります。ときには摩擦が発生することもあるでしょう。しかし、ぶつかって意見を交わし合ううちに、新たな価値観を学び成長します。また、今まで考えもしなかったことをあらためて考え直すことによって、無意識に続けていた非効率な慣習に気づくといったように、生産性を見直す機会にもつながります。

雇用創出により地域に寄与できる。投資家へのアプローチになる

スキルの高い外国人の雇用により地域の生産性を向上させたり、障害者の雇用機会を創出することで地域社会に貢献したりする例もあります。また、投資家も収益力や技術力といったこれまでの観点に加え、イノベーションを持続させる仕組みや環境、コーポレート・ガバナンスなど「経営力」をより重視していく傾向にあり、ダイバーシティはその尺度のひとつとして注目されています。

成功事例

ダイバーシティ経営で事業成果を生んだ事例を紹介しましょう。経済産業省による平成28年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」の受賞企業のひとつ、積水ハウス株式会社では1960年の創業以来、住宅の新築請負事業といった、男性中心の「請負型ビジネス」を主軸にして歩んできました。

2000年初頭から、ITを活用した業務効率化による長時間労働の是正に取り組んでいた同社は、2005年ごろから女性の営業職、技術職の大量採用を開始。2014年には女性管理職候補者向けの研修を行い、育成に力をいれました。こうした努力の結果、時間外労働は全社員平均でひと月当たり15時間削減。営業利益は2012年から毎年向上し、2015年度には2012年度比で1.7倍になりました。離職率も改善し社員の定着が進んでいます。時短勤務と在宅勤務を利用した社員や障害者のある社員がチームになって、既存技術にない新視点の商品を生み出すといった成果を出しています。

ダイバーシティ経営の取り組み方

ただ単に多様性のある人材を集めただけで、成果に結びつくわけではありません。「ダイバーシティ推進室」を作ったものの、経営者から権限が与えられず影響力を発揮できないという状況もよくある話です。個々の能力を引き出して多様性を活かすためには、経営者によるマネジメントとコミットメントが最大のポイントになります。ダイバーシティ活用に取り組むに当たり、経営側が何を心掛けるべきかをまとめてみました。

  • メリットをよく理解し、具体的にどう影響するのか深く考え社内に浸透させる
  • 表層的な多様性だけでなく深層的な多様性に注目し、個々の才能を引き出す
  • 制度・体制を整える
  • 変化を恐れない。変わるときは居心地の悪さや違和感があるものと腹を据える

コンサルティング会社のアーンスト・アンド・ヤングが、アメリカで1,000人の会社員を対象に行った調査(2017年6~8月)では、白人男性の約3分の1がダイバーシティ経営により職場で「疎外感を感じている」という結果が出ました(参照:「EY Studies Race, Gender and Exclusion: The Top Takeaways」|EY

)。多様性はときに軋轢・摩擦を生み、チームワークを保てなくなる可能性もあります。しかし、変化は常に居心地がいいわけではありません。ダイバーシティ経営の目的やメリットを十分に理解したうえで、経営者が意志を強く持ち、自ら動いてコミットしていくことが最も大切なことなのです。

グローバル化が進むなか、ダイバーシティ経営は競争社会で生き残るために不可欠です。優良企業になるためという消極的な取り組みでなく、経営戦略のためということを十分に理解し、積極的な取り組みを行っていきましょう。

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ワークハピネス
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