活躍に期待!シニア人材の状況と今後の課題について

少子高齢化による労働力不足や、年金支給開始年齢の引き上げなど、さまざまな要因から、定年を超えても働くシニア層や、そうしたシニア人材を雇用したい企業は今後ますます増えていくと思われます。現在はまだシニア人材を採用していない企業でも、いつか必要が出てくるかもしれません。この記事では、シニア人材が注目される背景、現在の状況と課題、企業が実践しているシニア人材の活用例を紹介します。

シニア人材はなぜ注目されるか

シニア人材の明確な定義はありませんが、一般的に定年とされる60歳、または高齢者の定義である65歳以上の層を「シニア人材」と呼ぶ場合がほとんどのようです。2012年には、「定年制の廃止」「定年の引き上げ」、あるいは60歳の定年後、希望者を対象に「雇用継続制度(65歳まで)」のいずれかを導入するよう企業に義務付ける「改正高年齢者雇用安定法」が成立しました。どのような背景のもと、国がシニア人材の活用に取り組むようになっていったのでしょうか。

シニア人材が生まれた背景

まずは、少子高齢化による労働力不足が大きな要因として挙げられます。厚生労働省職業安定局が発表した「改正高年齢者雇用安定法について」(PDF)によると、1950年には5%程度であった高齢化率(全人口に占める65歳以上人口の割合)が1980年には10%程度だったのが、2000年には17.4%、2015年には26%と右肩上がりで増加しており、2050年には35%を超えるとされています。また、総人口も少子化の影響を受け、2006年をピークに減少が続いており、このままさらに減っていくと予想されています。人口が減っているにもかかわらず、高齢化率が上がっているということは、主な労働力である15~64歳の層が減ってきていることを意味します。

日本社会の主要な労働力であった団塊の世代が、2007年から2009年の間にほぼ一斉に60歳の定年を迎えた「2007年問題」も、人材不足に拍車を掛けました。ベテランのノウハウやスキルが喪失されてしまったことも問題となっています。

また、厚生年金支給開始年齢の引き上げも要因のひとつです。年金制度の改革により、老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢は、2001年から2013年にかけて60歳から65歳まで段階的に引き上げられました。報酬比例部分についても支給開始年齢を2013年から引き上げ始めており、2025年にはやはり65歳となる見込みです。これにより65歳の厚生年金支給まで就労を希望する高齢者が出てきましたが、法改正前では60歳以上の再雇用は厳しい状況にありました。

こうした問題を受け、政府は改正高年齢者雇用安定法を定め、シニア人材の活用に力を入れるようになったのです。シニア人材の活用により、不足している労働力を補い熟練した技術を継承すること、加えて、年金支給開始年齢の引き上げによって起こり得る経済的負担の解消も期待されています。

シニア人材活用の現在の状況と課題

労働力人口に占める65歳以上の割合は、1980年では4.9%でしたが2015年には11.3%と2倍以上に増加しました。では、企業側の受け入れ態勢はどうでしょうか。

<現状>企業の高年齢者雇用実施状況

厚生労働省がまとめた報告書「平成28年『高年齢者の雇用状況』」(PDF)では、高年齢者の雇用確保の措置をすでに実施している企業の割合は99.5%と、ほぼすべての企業が何らかの措置を取っていることが分かります。そのうち、定年制を廃止した企業は4,064社で割合は2.7%、前年から154社、0.1ポイント増加しています。65歳以上を定年として定めた企業は24,477社で、割合は16.0%となり、前年より1,318社、0.5ポイント増加しています。

一方、希望者全員が66歳以上まで働ける継続雇用制度を導入している企業は7,444社で、割合は4.9%となり、やはり前年より0.4ポイント増加しています。さらに70歳以上まで働ける企業は32,478社で割合は21.2%。前年より1.1ポイント増加と、最も勢いの良い伸び率を見せています。

このようにシニア人材を活用する企業は着実に増えていますが、課題も多くあります。シニアだからこそ生じる問題に目を向け、しっかりと対処していくことが企業に求められます。

<課題1>シニア人材のマネジメント

これまでシニア人材を採用した経験が乏しい企業では、なかなかうまく人材を活用できないという問題があります。シニア世代では、一から新しいことを覚えるのに苦戦したり、体力の衰えから若い世代と同じように働けなかったりといったケースもあります。

そうした場合、仕事の内容を限定したり細分化したりすることも視野に入れましょう。作業を単純化することで、理解度も深まりミスが減ります。また、業務内容に合ったキャリアの人材を採用したいときは、仲介派遣業者を利用するのもひとつの方法です。シニア人材に特化した派遣業者も増えており、膨大な求職者のデータから、マッチする人材を探してくれるはずです。

加えて、適切な管理体制を導入することも検討しましょう。いったん退職したシニア人材のなかには、以前のようにフルタイムで働くよりも、家族や趣味に使う時間を十分に取るといったように、ワークライフバランスをより重視し始める人もいるでしょう。働き方の希望や体調、経済的状況などを考慮して、時短勤務や在宅勤務などを取り入れると、シニア人材にとって働きやすい職場に感じられるかもしれません。

<課題2>シニア人材の能力の把握不足

また、シニア側も自分の能力の変化を把握できていないという問題もあります。基本的に、シニア世代は若い世代より体力が低下していることも考慮に入れなければなりません。また「自分はまだまだ若いときと同じように働ける」と本人が思っていても、反射神経や瞬発力、注意力などが低下していることもあります。思わぬ事故やトラブルを起こす原因にもなりかねません。

これを避けるためには、企業側が人材の能力をしっかりと把握しておく必要があります。シニア人材と管理職の定期的な面談による現状の見直しや、業務を行いながら内容や役割を修正していくような柔軟性を持つことを意識しましょう。

シニア人材活用の具体例

こうした課題を乗り越え、シニア人材を活用している企業の取り組みを、具体的な事例から見ていきましょう。

事例1 TIY株式会社

自動車部品製造業を手掛けるTIY株式会社では、従業員数120名のうち半数が60歳以上だといいます。「年齢、性別、障害の有無に関係なく働ける環境を整える」という理念のもと、シニア人材が働きやすい環境づくりに力を注いでいます。部品製造の工程をできるだけ細分化し、単純化することで作業に集中できるようにしています。

また、効率化を図るとともに高齢者が仕事をしやすいように、各工程に特化した専用の機器を自社開発しています。例えば、ボールベアリングのボールを同時に16個自動挿入できる「スプラグインサーター」や、ベアリングに軸を差し込むときに用いる作業ミス防止装置などです。こうしたオリジナル機器や用具の作成ノウハウが、さらなるビジネスとして成立したこともあったといいます。

事例2 ダイキン工業株式会社

空調総合メーカーのダイキン工業株式会社では、基本65歳まで、特別措置として最高70歳までの再雇用制度を導入しています。個人差のある体力面の衰えや家庭の事情などを配慮し、本人の希望を反映してフルタイム勤務、短時間勤務、隔日勤務、登録型の4つの勤務形態を採用しています。

フルタイム勤務は1日7.75時間、短時間勤務は1日6.5時間と労働時間が異なり、隔日勤務は2週間で計5日間の勤務となっています。年収はそれぞれの勤務形態によって異なります。登録型はアルバイトのような形態で、希望する仕事があるときのみ時間給で働くという形です。

この再雇用制度は、本人のやりがいや収入面での安心感などを軸としたものであり、可能な限り本人の好きな働き方で仕事をすることを重視しています。

 

こうした企業の取り組みに見られるように、既存の仕事にそのままシニア人材を充てるのではなく、働き方や作業内容をシニアに合わせたものに見直すことで、より効果的な人材活用ができるようになるでしょう。シニア層が貴重な労働力となってきている現在、いかにシニア人材を受け入れる環境を作れるかが、人手不足解消の鍵となりそうです。同時に、これまで培ってきた経験を発揮する場を設けることで、シニアの人たちのスキルや技術を次の世代へ引き継いでいくことも可能になるのではないでしょうか。

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ワークハピネス
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