与えることにフォーカスすると人は幸せになる B1G1 佐藤昌美さん

今回のリーダーズインタビューは、B1G1の創設者である佐藤昌美さんです!昌美さんは、日本で生まれ育つも「視野を広げたい」という強い想いを抑えられず世界探検の旅へ。さまざまな文化、生活様式にふれ、理解を深めるために『人々とのつながり』を深める活動を行っています。


B1G1 創設者
佐藤 昌美さん

日本で生まれ育つも「視野を広げたい」という強い想いを抑えられず世界探検の旅へ。さまざまな文化、生活様式にふれ、理解を深めるために『人々とのつながり』を深める活動を行う。「異文化の人との”真のつながり”こそが、本当のWIN-WINの関係に満ちた世界を実現するために必要なものである」ことに気づく。「Connection(つながり)&Giving(与え合う)の力」を確信し、2007年にBuy1 Give1(B1G1)を設立。「真のビジネス変革とチャリティーモデルを創造する」を信念に活動している。現在に至るまでに、翻訳者・健康コンサルタント・自然食品シェフ・著者・起業家などとして、多彩な才能を世界で発揮してきている。10カ国以上に出向き、自らの考えを講演し、各国のテレビやラジオなどにも登場されるなど世界中で活躍している。

<B1G1とは?> https://www.b1g1.com/businessforgood/
「Buy1 Give1」=「Buy」というビジネスの活動を「Give」という有意義なアクションにつなげていく活動。つまり経済活動をしている企業がその活動で得た利益を世界のNGO、チャリティー活動、プロジェクトに”つなげていく”というGlobal Giving活動。

【著書】
「JOY - The gift of acceptance, trust and love」
「ONE - Sharing the joy of giving」
「GIVING BUSINESS – Creating the maximum impact in the meaning-driven world

大きなことをしなくてもよい 小さなことを“今”から始めよう! 

インタビュアー岩波
早速ですが、現在、昌美さんが展開されている「B1G1」という活動について簡単に教えていただけますか?

佐藤
B1G1は「Buy1Give1」の略です。「Buy」というビジネスの活動を「Give」という世の中に有意義な変化を起こすようなアクティビティにつなげていく活動で、経済活動をしている企業がその活動で得た利益を世界のNGO、チャリティー活動、プロジェクトに“つなげていく”という「Global Giving Initiative」です。

私はこの活動を2007年にシンガポールで立ち上げ、今年で10年目に入りました。 現在は35カ国以上の国から約2000社の企業が加盟してくれています。加盟している企業の殆どは中小企業です。そして、NGO・チャリティーなどの活動は700プロジェクト以上あります。

加盟している企業がB1G1のWebシステム、プラットフォームを使って、「この商品が売れたらこの有意義なプロジェクトにGivingする」ということを決めていきます。

例えば、ある会計系の企業は「新しいお客様を獲得するごとにケニアの家族にヤギを1頭提供できる。そして、その家族に収入をもたらすことができる。」というふうに。

加盟いただいているある会計系の企業のお話をしますと、もともと「これをやりたいという志を持つ経営者をサポートしたい」という想いで起業されていました。その企業の成功と進歩が、B1G1によって実りのあるプロジェクトにつながっていくことで、さらにその企業の真の目的、想いへの意識を深めていくことに繋がっていくことになるのです。

加盟する企業それぞれがプロジェクトを選び、このような『Giving Story』を創っていくのです。 このGiving Storyにより、企業で働く人たちが自分の成功が他の実りのあるプロジェクトに繋がっていくことを感じながら自分たちのビジネス活動を続けていくことができる。これがその企業の信念や存在意義、大きな目標を常に意識できることにつながり、結果的に良い経営を続けることに繋がると思うのです。

だから、プロジェクトの選択においてはかなりこだわりがあり、慎重にセレクトしています。 世界中にチャリティーの活動に募金ができるというシステムは他にもたくさんあるのですが、B1G1では、今お話したように、いかに『Effective Giving』を最大限に実現していくかどうかということを重視しています。

人間って「こうしたい!」という大きな目標を見ていると「そこにどうやってたどり着いたらよいか?わからない。」「今やっていることが成功してから」「もっと時間やお金が確保できてから」など言い訳をして後回しにしてしまいがちですよね。

今の時点では時間もないし、お金もない。だから毎日、会社に行って、仕事して・・と 毎日の目の前のことを繰り返してしまいがちです。

「大きなことをしなくてもよいから小さなことを今から始めよう!」企業で働く人たちの「こうしたい!」を、B1G1の活動を通して今日から始められる。そんな活動になればいいと思っています。

B1G1の中で立てているゴールの1つにImpact(インパクト)の数を指標にしています。

インパクトとは、「いくら(金額で)与えた?」ではなく、「与える行為がどういう影響をあたえるのか?」ということを示す指標です。

例えば、チャリティーの中で井戸を掘るというプロジェクトがあり、費用で50万かかるといったときに、そのサポートを1つの中小企業ですることはハードルが高いかもしれない。なので、サポートしやすい単位にブレークダウン(分割)していくのです。ブレークダウンしたときに一番小さいインパクトは、“1人が1日1回井戸にアクセスできること”とする。
これを1インパクトとカウントします。1インパクトを1円で起こせるとするなら、10円で10人が井戸にアクセスすることができる。つまり10インパクトを世の中に与えることができるとなります。
このように、それぞれのプロジェクトにおいて「1インパクト」をどうブレークダウンしていくか?という設定がされていきます。小さなインパクトを重ねることで世の中が少しずつ変わっていく。これがB1G1の大切にしていることの1つ目です。

2つ目はHabit(習慣)です。インパクトを重ねていくことにどういう意味があるのか?それは、そこに加盟している企業や働く人の習慣が変化していくことに繋がります。
習慣を変えることが実は一番難しい。ただ、自分たちの習慣を変えていかないと世の中を変えていくことはできない。小さなインパクトを続けることによって、それがやがて習慣になる。習慣になることで、それがやがてB1G1に加盟している企業カルチャーになっていきます。そういう企業が増えることで世界にその習慣が広がっていくと考えています。

3つ目はConnection(つながり)です。企業にとって、利益をあげることは重要だけれども、「なぜ稼ぐのか?」という本当の目的、いちばん大切なやり遂げたい目標がありますよね。それを広めていくためには企業は成長していかなくてはならないです。そのためにインパクトを拡大し、自分たちの活動のConnection、つながりを深める事が大切です。1つの企業、一人の人間が世の中に生み出せる変化は限界がありますが、「つながること」で大きな変化を生み出すことができます。だからこそ、Connectionを深めて行く必要がある。

私達はこのB1G1のGivinig活動が、企業にとっConnectionを広めげて深める活動になればと心から願っています。

みんな「持つ」ことを望んでいるのに「持っている」ことが幸せになるとは限らない・・矛盾を感じた

岩波
そもそも、昌美さんがB1G1の活動を始めようと思われたのはなぜですか?

佐藤
私が日本を出たのが今から22年前になります。初めてカナダに行き、全く話せなかった英語を勉強しました。当時、私は日本と外国は別物と思っていました。だから、日本人の私は外国を理解できないとも思っていたんです。

でも、どんなに英語ができなくても世界の方々は私を暖かく歓迎してくれるし、困っている時は誰かが来て助けてくれました。

旅をしているうちに気づいたことは、先進国には生活水準は結構高いし、物を持っていても「満たされていない人」がたくさんいたんですよね。

一方、インド、ネパールなどの途上国にいると、毎日の食べ物が確保できるかわからないし、学校にもいけない子どもがたくさんいる。でも、何も持っていないそんな国の人たちがとても幸せそうにしているんですよね。しかも、潤沢でない食べ物を私にシェアしてくる、仲間に入れてくれる。

私は、何が何だかわからなくなってしまって。

みんな「何かをつかみたい!」と思って生きているにもかかわらず、「つかんでいる、持っていること」が幸せになるとは限らない・・。そこに、とても大きな矛盾を感じました。

数年後、私自身に子どもができたときに突然突き動かされました。

自分の子どもが本当にかわいくて仕方ありませんでした。こんなに愛情を注げる感覚を持ったことがなかったので子どもの存在に本当に感動しました。ある日、自分の子供を見ているときに突然、旅で出会った親がいない子供たち、学校にいけない子供たちの顔が浮かんできたんです。

「もしかしたら、自分の娘がその状況になっていたかもしれない・・。」

そこから、私は“どう生きていくか”を真剣に考えました。そして、自分たちがやりたいことをやったときに、そこで得たものをストリートチルドレンたちに還元したいと思ったのです。

世界中を旅していたときにカフェで働いていた経験を生かして、娘が生後3ヶ月のときに、前の夫と食品関係の会社を立ち上げました。利益はすべて還元しようと思っていました。そして、世界の子供たちのために「スープキッチンをはじめる」ことにつなげようと決めていました。 これがB1G1の前進のビジネスの始まりです。

5年後、ニュージランドからオーストラリアへ拡大し、オーストラリアでは真空パックで冷凍食品を150店舗に卸すことができるまで成長しました。

ところが、ますます忙しくなっていく中で、突然また気づいてしまったのです。 利益があがったとしても、パッケージを新しくするなど今のビジネスをよくすることに使ってしまっていた。成功したらスープキッチンをはじめる!と思っていても、このままビジネスを続けていていたら、いつまでたってもスープキッチンは実現しないのではないか?10年後も一緒のことを言っているのではないか?

このときに、「大きなことをやろうとしなくてもいい!1つ商品が売れた時、1食分、子供たちに還元すれば良いのではないか?」という発想、つまり、今のB1G1のコンセプトが生まれきたのです。

そしてこのコンセプトのもと更に考え続けて、また気付きました。私は子供たちに食事を提供したい!子供たちを学校に行けるようにしたい!と思っていたけれども、世界中にはそれ以外にももっとたくさんの問題がある。

私たちだけでやるのではなく、世の中の変化に貢献できることがしたい!と想っているいろんな企業の人達が、世界のたくさんの問題とつながり、“小さなことから””今から”貢献できるシステムがあったらよいのではないか?この構想にたどり着きました。 その後、食品会社は売り、シンガポールに移住して、B1G1を立ち上げることになりました。これが10年前です。

GettingよりGivingフォーカスの人のほうが幸せに生きている。“与える”ことにフォーカスすると人は自然と幸せになっていく

岩波
B1G1の前にもビジネスをされていたのですね。150店舗に卸すまで拡大、経営のセンスもすごいですよね

佐藤
ビジネススクールにも行ったこともなく、何も知らずに始めたので、はじめの何年かは、失敗を繰り返して学ぶしかなかったです。でも、仲間に恵まれて手助けいただきながら、なんとかやってこれました。

B1G1の活動は、経営者の人たちがパートナーでもあり、サポーターです。よって、B1G1では、ビジネスの考え方を実践したいんです。イニシアティブとしてもチャリティーにはなりたくなかった。チャリティー主導になると、自分たちの活動のために寄付を依頼するということになりますよね。それは違うと思うのです。 企業で働く人達がしっかりと世界の様々な活動の「価値」を分かってくれれば「自分たちから」Givingをしたいと思うようになると思うのです。「価値」から生まれていかなくては行けないと思ったのです。

この考え方を貫いているため、設立から最初の数年間は赤字でした。
ただ、様々な企業経営者が想いに共感してくれて。また、いろんな能力のある方々が力を貸してくれたからこそ今のB1G1の価値が生まれました。

岩波
自分でビジネスやられていたからこそ、経営されている方々が何に価値を感じるか?を理解し、その先の価値を考えることができた。そして、それに共感する人たちも昌美さんの周りに集まってこられた。志のもとに多様な才能が集まるチームですね!!

今までお話をお伺いして、B1G1の活動はとてもシンプルで本質的でわかりやすいと思いました。 今の世の中はお金と拡大が目的化してしまい、何のためにお金を稼ぐのか?何のためにビジネスを大きくしたいのか?といった本来の目的が薄れていますよね。

B1G1は、まさにそれを呼び起こす活動だと感じました。「何のために?」へ意識を戻すことで、ただ忙殺される仕事から、もっと充実や幸せを感じられる人が増えていくでしょうね。

佐藤
旅しているときに気がついたのは、幸せを感じて生きている人の共通点は 「人の役に立ちたい、分け合いたい」というGiving中心の想いがあることだと思いました。「人の笑っている顔がみたい、価値を分け与えたい・・」など。

Givingの逆がGettingです。「他の人より成功したい、もっとお金を稼ぎたい」Gettingが中心の生き方をしていると、「もっと得たい、ほしい」という想いがどんどん強くなります。

この2つを比較するとGivingフォーカスの人のほうがより幸せに生きていると思ったのです。「与える」ことにフォーカスすると人はガツガツせずに自然と幸せになっていく。

例えば、Gettingフォーカスの経営者が「安い賃金でいかにこき使うか?」「いかに一番安い材料を使って、安く提供するか?」そう考えていると、その企業で働く従業員たちもGettingフォーカスになり「もっと給与くれ!もっと休みくれ!」と主張しますよね。

ガツガツと得ることを目標に生きていてもすごい成果を上げることができますが、人が信用できないなど、寂しくなっていく人たちが多いと感じています。

逆に、会社の経営者がGivingフォーカスだとその志、Missionに集まってくれる人たちが多いと感じます。そういう人達はイキイキと働くことが出来ていると思います。

どちらのフォーカスでも成功=お金を稼ぐことはできると思います。 ただ、実際にイキイキと幸せに生きていくには、Givingフォーカスが大切だと思うんですよね。

岩波
とても共感します。私たちも企業のコンサルティングをする中で、同じような話をよくしています。人は誰しもGiving的な性質とGetting的な性質を持っています。環境によって引き出される人格が違うということ。経営として従業員のどちらの人格を引き出すのか?

Gettingにフォーカスすると、競争心と不安を駆り立ててそのエネルギーで短期的にはパフォーマンスがあがるが、人が疲れてしまい続かない、幸せ度合いが低く、結果、経営も長続きしない。Givingの思想での経営のほうが長期的に主体性と創造性が生まれ絶対にサスティナブルなんですよね。こういう思想を私たちも広めていきたいと思います。

佐藤
この世の中は矛盾だらけですよね。 世界中にはお金持ちなのに、将来の夢や希望がない人もいる。

世の中のシステムが「いかに自分がたくさん得るか?」というものになっているからだと思うのです。得られる人はどんどん得られていく、でも、そのために得られない人がでてきていて、その人達が犠牲になっている。テクノロジーが発達することによってその格差が更に広がってきています。

私はこの逆で「与え合う、人を助ける、シェアする」「自分の幸せが他の人の幸せになる」そういう習慣が世の中にもっと広がっていけば、いろんな問題が解決されていくと思っています。

ただ、「貧困の人が惨めだから助けてあげよう」という考えは一部差別的な発想かもしれません。「与える」行為が自己中心的に、または罪悪感に翻弄されて行われると、それにより、更に「差」ができてしまうこともあります。そして、与えられる側の依存が加速していってしまうことも。ただ、「与える」ことだけが大切なのではなく、「Connection=つながり」が大切だと思うのです。

皆さん、自分の家族や友だちが困っていたら助けますよね? でも世界のいろんな人が困っていても、自分たちが困らなければそれでいいと思いがちです。

困っている人たちがもっと身近になり、少しでもできることをしたい!と思えることで、自分の気持ちもよくなり、役に立ったことでさらに満たされていく。 そういう意識を呼び起こしていくことから、世の中の変化が生まれていくと私は思います。

そして、そのような意識の人たちは「還元、貢献」つまりGivingフォーカスをしている会社に集まり、そういう企業にはいいお客様が集まってくる。よって、ビジネスがうまくいく。こういう企業が増えてくれば、多くの企業がそのことに気づきますよね!それを促進していきたいです。

岩波
昌美さんは、ご自身の想いや考えを実際にカタチにされていることが本当に素晴らしいと思います。そこに、昌美さんの強い信念を感じます。 改めて、そんな昌美さんはどのような世界を創っていきたいと思われますか?

佐藤
「Giving Spirit」を企業を通して世界に広げていきたいです。

それはお金のGivingだけではありません。お金や資材を分け合うというのは「Giving Spirit」のほんの一部です。ですが、初段階では、B1G1を通してお金を動かしていきたいと思っています。活動資金が効率よく回っていけば、成果の高いチャリティーの活動がうまく動くようになるからです。

そして、その活動を始めた企業のあり方、マインドが変化していく。 ただ「お金を与える」のではなく、お客さんに対しても「そのプロジェジュトの効果」を理解してもらい、従業員にも「その効果」に意識を持ってもらう。企業を通じてその「Giving Spirit」そのものが広がっていく。

世の中の良い変化を創っていることを実感できることで、お金のやり取りだけではない価値、感謝などの「気持ちの価値」を感じられるようになると思うのです。そのためにも、まずはどの企業にも共通するお金でアクションを起こしていきたいと考えているんです。

どういう風に「Giving Spirit」を拡大していけるか。1円からのお金を通してGivingを起こしていき、そこから気持ちフォーカスのGivingへいかに変化させていくのか。それが大切だと思っています。

岩波
昌美さんの語るストーリーがとても大切だと感じました。お金にフォーカスではなく気持ちフォーカスのGivingを広めていく。でも、きれいごとを言っていても物事は動かない。だからまずはお金を動かすことからスタートされた。本当に納得です。

お話を伺えば伺うほど、日本で広めていきたいと思いました。 日本の精神性からいってとても広まりそうな気がします。

佐藤
日本の企業に加盟してもらうには、日本のプロジェクトにも加盟いただける必要があると考えています。ただ、プロジェクトの条件が英語でコミュニケーションを取れるところに限られてしまうのですよね。審査も英語でやるので、日本語の書類を提出されても審査できないですよね。

だから、私たちの活動に興味のある会社があったら、すこしずつでも加盟していただく。日本の会社の加盟が少しずつでも増えていけばいいなと思っています。

大きな組織では、意思決定のプロセスの中で、「こうしたい!」という自分のパーソナルな感情・感覚ではなくなっていく

岩波
そうですね。私たちもサポートできればうれしいです。ところで、加盟企業は大企業ではなく中小企業にフォーカスされているのは、「小さいところから変えていく」ということの体現ですよね?

佐藤
大企業であれば、多くの企業はCSRという活動をやっていますよね。中小企業はその活動に注力する余裕がない。だけれども、中小企業の経営者には信念があると感じています。

私と同じように社会問題を解決するためにビジネスを始めた方も多くいらっしゃいます。よって、中小企業の「決断」は経営者がその信念に基づいて行っている場合が多いのです。また、中小企業の経営者のほうが、B1G1のコンセプトや考え方、私たちの気持ちを理解してくれるし、共感してくれる。

10年前は実績もなかったし実態もなかった。 そんなときにも中小企業の経営者は私たちの気持ちをわかってくれる方々がいらした。

大企業はというと「利益になるのか?」ということが重役会議での議論になる。意思決定のプロセスの中で、「こうしたい!」という自分のパーソナルな感情・感覚ではなくなっていってしまう気がするのです。

大企業と組んで、大きなチャリティーをやると一時的には大きな動きになりますし、大きな寄付をもらえたり、有名な活動になるかもしれない。ただし、そうなると依存が生まれてしまいます。今年1年間だけこんなに多くの寄付があった!でも次の年には何にもない、気が変わったから、なんてことはよくありがちなのです。また、もしもその大企業が不正をした場合、たった一つの出来事が、B1G1の活動に大影響を与えることになるかもしれません。

B1G1には「Power of Small(小さなことが大きな力になる)」という大切にしている信念があります。

小さい会社がそれぞれのやり方でいろんなチャリティーに参加していくことが大切で、いろんなチャリティーにつながることで、少しずつの寄付が、少しずつ習慣を変え、良い変化を重ねることになる。このことに意味がある。

もしかしたら、小さめのチャリティーと小さめの企業とつながることで失敗もいくらでもあるかもしれないけれども、そこですぐ立ち直れる、その失敗から学んで少しずつ改善できるものだと思うのです。

だから、大企業には私たちから積極的にアプローチはしないんですよね。でも最近は、 大企業からアプローチされることもあり、そのときには個別に話を進め参加いただくこともあります。大きさにかかわらず、本当に共感してくださる会社がそれぞれお手本になって、もっとたくさんの中小企業の方達に私たちの活動のことを知ってもらえるといいですね。

繰り返しになりますが、変化が少しずつ広がってくることが大切なのです。

1つのプロジェクトに集まる金額も少しずつ増えてきていることがわかってくる。 そうすると、同じようなプロジェクトは他の国でもできるのではないか?ということで、 同じようなプロジェクトのアプリケーションを増やしていくこと判断をする材料にもなるのです。でも、プロジェクトはたくさんあればよいというものではない。プロジェクト数を増やすことで、いま存在しているプロジェクトへのお金が下がってしまう可能性があるからです。だから、そういうところも少しずつ、調整しながらやっていく必要があるのです。

そういう意味でも、主に小さい企業と小さく変化をたくさん起こしていくことが大切だと思っています。

岩波
今のお話で、なぜB1G1がなぜサスティナブルなのか?がとても良くわかりました。「Power of Small」この信念があってこそですね。 ところで、昌美さんが活動されていて、課題や壁を感じることはありますか?

佐藤
はい。大きく2つあります。

1つ目は、いかにOnline referral、口コミで活動を広めていけるか?です。B1G1ができて10年経ちますが、加盟している企業の80%は私たちのイベントに参加したことがきっかけです。これまでの10年は、意識的に「どう貢献しようか?」と考えることが世の中の流れでもなかったので、私たちから出向いていってお話をしていましたし、私たちもプロフェショナルとして場に行く必要があったと感じています。私たちの活動自体、信頼がとても大切ですから。Face to Faceで話し合って加盟していただくことが大切だったのです。

ただし、私たちが出向いて行けるイベントも限られています。よって、加盟数が限られてしまっていました。これからはその国、その場に行かなくてもB1G1の活動をいかに広げられるか?が鍵を握ると思っています。WebやConnectionからビジネスモデルを理解してもらい、デジタルマーケティングで、いかにいろんな会社とつながっていけるか?これが1つ目の課題です。

2つ目は、プロジェクトのロケーションが偏っているということです。 今まではオーガニックに広がっていたため、B1G1のプロジェクトがすでにあるところには、 プロジェクトが多くあり、さらに紹介等々でたくさん依頼が来ます。すでに、インド、カンボジアなどは受け入れ限界です。

また、B1G1が行けていない国もあり、加盟していないプロジェクトが世界中にたくさんある。B1G1メンバーが1人もいない、メンバーが行ったことのないところからは加盟の依頼がはいってこないのが現状です。先程もお話しましたが、英語でやっている壁になっていると思います。多言語での展開もしていきながら、そういう国のプロジェクトをどのように増やしていくか?が課題です。

B1G1の活動の目的は世界中の問題を解決していくこと。 だからプロジェクトも世界中に広げていきたいと思っています。

岩波
Onlineやデジタルマーケティングなどで世界中に展開していくために、多言語にする以外にもいろいろできそうですね?

佐藤
面白い話、感動的な話って、デジタルメディアを通してどこへでも広がっていけますよね?

だからいろんな「ストーリー」を伝えること、つまり、いかに「ストーリーテリング」できるか?ということだと思うのです。

それこそ、なぜB1G1を立ち上げたのか? どんなストーリーが「B1G1」になっていくのか?B1G1に加盟して企業の中でどのようなことが変化していくのか?

B1G1のコミュニティーに存在するいろんなストーリーを1つずつカタチにして語っていくこと、見せていくことが大切だと思います。

認識と事実は違う。だから外から見た目だけで判断してはいけない

岩波
いやすごい。まさに、昌美さんの今日のお話がストーリーテリングですよ。このストーリーを聞くからより引き込まれます。

こういう活動を続けていても、今日的な常識に縛られていつのまにか曲がっていく人たちも多い中、昌美さんは全くブレずに活動を続けてらっしゃる。それはなぜですか?

佐藤
自分たちが感じること、見て気づくこと、すべてがPerception(認識)だと思うんですよ。今の自分の目を通して観るとこう見えるということ。しかしReality(事実)というのは誰にもわからないんですよね。

だから、人間は何かと比べていろいろなことを判断しますよね。

良いか?悪いか? 楽しいか?楽しくないか? 幸せか?幸せでないか?

成功している人と比べると自分が幸せだと思えない。 悲劇に出会い続けている人を観ると自分はラッキーだと思える。

今の自分は、その自分でしかないのだけれども、他と比べることによって、 嬉しかったり、嬉しくなかったり、幸せだったり、幸せじゃなかったりする。
だから、よい比べ方ができれば、みんな、自分が幸せだと思えると思うのです。

世界には2時間かけて水を汲みに行く人がいる中、蛇口を捻ったら水が出てすぐ歯を磨くことができているだけで幸せですよね。

そういう視点で世の中を観るようになったら私はとても幸せを感じるようになりました。失敗も笑い飛ばせるようになって笑いながら解決策を見つけられる自分もいます。

自分が経験してきたこと、今、自分の持っているもの、今の家族や友達、今所属している会社とか、なにもないことに比べれば、今、自分が持っているもの、働けていることだけで幸せで本当にありがたいこと。すべてに感謝できていれば、それだけで幸せだと思うんです。

そして、自分が幸せで満たされている、幸せに恵まれている。 そう思えるからこそ、恵まれているものどれだけ分け与え、喜びを広めていけるのだと思うのです。

私は幸せでラッキー!だから元気のない人にpowerをあげたい!悩んでいる人を笑わせたい!というようにいろんな状況の中で、自分がやれることを見つけていくことって出来るんですよね。

でも、良いことをやっているのに幸せを感じられていない人たちもいる。 それは、その人達が悪いのではなくて、そういう視点で物事が見られていないだけだと思うのです。 つまり、世の中の見方が「自分のため」になっていない。 だから、B1G1を通して、世の中の見方を広げていただけたらよいと思っています。

私は、世界中の企業経営者に伝えたいです。世の中には本当に悩んでいる人たちがたくさんいます。そのような中で、「企業を経営できているだけですんごいラッキーなんですよ〜」「経営者として世の中に対してよいことをしていく可能性を秘めているんですよ~」ということを。そこに気づいてもらって、イキイキと仕事をしてもらいたい!そのほうがみんなにとって気持ちよいですよね。

岩波
本当に、話を聴いているだけで幸せになってしまいました。私たちの思想と一緒ですし、共感しますし、そういう世界を一緒に作りたいと心から思いました。こういうエネルギーを広めるためには、こういうエネルギーを実際に自己の体験として感じたことのある人を増やしていくことですよね。共に感じていくこと。

佐藤
子供の頃にいじめられた、愛情を受けなかったなど、過去にトラウマがあって、それに影響されて今の自分の価値観、物事の見方ができていたりしますよね。

信用出来ないと言っている人たちほど、信用したいという気持ちがどっかにあったとしても、その事実を見たくもないと思っている人たちがたくさんいる。 でも、それはその人が悪いわけではないと私は思うのです。

いろいろなチャリティープロジェクトを見に行くと、本当にひどいことがたくさん起こっています。見たり聴いたりしたときに、怒りを感じるべきなのか?どう感じるべきか?

例えば、差別だったり、暴力があったりしたときに、人は被害者、加害者をつくりがちです。そうなると暴力や差別をする人が悪くてその人が加害者であり、加害者をいかに責めていくか? というところにフォーカスが当たることになっていきます。

でも、見方を変えれば、差別する側が被害者かもしれない。客観的にチャリティーの問題を見ていくと問題の本質や解決策はまったく別のところにあったりするのです。

岩波
そういう局面に触れたときに、昌美さんはどのように感じるのですか?

佐藤
人間は感情の生き物、人によって物事の感じ方が違いますよね。

私は問題があることがGiftだと思っています。 問題があることでそれを解決するチャンス、力が与えられる。

ただ、問題があったときに、こちらが外部から状況の本質もわからずに加勢したり、加害者をつくってやっつけようと入ってしまうと状態は悪化します。

大切なのは、「うまい仲介役になること」。可能性があることに対する手助けをすることはできるけれども、何が良くて何が悪いのか?を外から見た目だけで判断してはいけないと思うのです。

こういうことが起こっていることに対して興味を持ち、なぜそれが起こっているのか? 話を聞きながら、背景や事実を一緒に理解していくことがとても大事だと考えています。

学校に行けない子どもがサポートを受けて学校に行けるようになった。その子どもが医者になって、自分と同じような子供たちをサポートする側になっていくことを選択するようになる。助けられた人が助ける人に回っていくという事実があると、私の感情が動き、とても喜びを感じます。

岩波
なるほど。それにしても、昌美さんの言葉ってシンプルで整理されていて分かりやすいです。お話を伺っていてそう思います。

佐藤
私は、考えるのが大好きです。はっきりしないことがあると考え続けるんです。なぜだか分かるまで、「あ!これだ〜」って思えるまで考え続ける。

人の話を聴くと、それそれ!私が言いたいのはそれ!!ということが結構多くありますよね。 これって、自分の考えだとかではなく、みんな同じようなことを考えているなぁと思うのです。 表現が違うので、みんなで、共に向きあうことで見えるものって似通ってくると感じてます。

岩波
まさにシンクロニシティで、そういう生き方や考え方をしている人々が昌美さんの周りには集まってくるんでしょうね。共に語り合い、影響を与えあい表現もシンプルでパワフルになっていく。
これから昌美さんがやっていきたいこと?将来展望を聞かせてください!

佐藤
ちょうど、先週、1million(100万)インパクトに到達することができました。次の私たちの目標は1billion(10億)インパクトにどう達成できるか?です。

10年目。インパクトも重なり、そのスピードも高まってきました。さらに広げるために、そのために新しいやり方でどう広げていくか?ですね。そして、現在の代表のポールや私がいなくても広がっていくイニシアティブになってもらいたいと心から思っています。

人生も企業経営も、私は「楽しむため」だと思う

岩波
本日は、たくさんお話させていただき本当にありがとうございました! 最後に、次世代を創るリーダーにメッセージをお願いできますか?

佐藤
私は人生でもビジネスでもゲームみたいなものだと思っているのです。 ゲームをする理由はゲームに勝つためと思われがちですが、本当は一番大切な目的は「楽しむこと」だと思うのです。

子どもたちを見ているとゲームの結果にこだわりすぎると、機嫌が悪くなったり、ズルをしたりする子も出て来ます。そうすると楽しめない状況が起こりますよね。

ゲームはいつか終わってしまうものです。ゲームで結果を得たとしても、得たものを所有し続けることができません。人生も会社も環境がかわったら得たものがどうなっていくか?なんてわからないですよね。

なぜ人生を生きているのか?
なぜ企業を経営しているのか?

私は「楽しむため!」だと思うのです。

この企業は良くない、この仕事は楽しくないってことは言いやすいですよね。 楽しむことって、自分で決めることが出来る!どんなことにでも絶対に楽しめるやり方があると思います。楽しいと思ってやっているうちによい循環が起こってくる。 人生ってそういうものだと思います。

だから、毎日を楽しむことこそが大切だと私は思っています。
人生楽しんでいきましょう!

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著者プロフィール

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岩波 直樹
取締役。富士銀行(現みずほ銀行)において、法人営業業務を担当。
様々な企業経営者と向き合う中で、経営において「人と組織のもつ潜在能力を最大限に引き出すために何が出来るか」という命題にたどり着き、自ら実践者となるべく2002年ワークハピネスの立ち上げに参画。
世界有数の外資系製薬会社の採用戦略コンサルティング、数十年利益の出ていなかった老舗ホテルのターンアラウンド、民放キーテレビ局の人事制度改革など数多くを成功に導く。現在は、従来の組織マネジメントにパラダイムチェンジを起こす組織開発プロセスデザインや、 過去の成功体験に縛られない経営陣・管理職を生み出すプログラム開発等を手掛けている。

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